データプロバイダーの使用

PSQL データプロバイダーを使用すれば、.NET 対応アプリケーションやアプリケーションサーバーへのデータアクセスが可能になります。データプロバイダーはインターネットまたはイントラネット経由で、主要なデータストアへの高パフォーマンスなポイントツーポイントアクセスおよび n 層アクセスを提供します。データプロバイダーは .NET 環境向けに最適化されているため、現在使用しているシステムに .NET 技術を組み込み、その機能を拡張してパフォーマンスを向上させることができます。

接続プール、ステートメントキャッシュ、セキュリティの設定、PSQL Bulk Load、および診断サポートなどの高度な機能については、高度な機能を参照してください。

標準 ADO.NET 環境における ADO.NET データプロバイダーの使用法については、ADO.NET データプロバイダーを参照してください。

ADO.NET Entity Framework でのデータプロバイダーの使用法については、ADO.NET Entity Framework データプロバイダーを参照してください。

PSQL データプロバイダーは、Microsoft .NET Framework 2.0、3.0、3.5、3.5 SP1、4.5、4.5.1、および 4.5.2 に準拠しています。データプロバイダーは 100% マネージコードで構築されています。つまり、完全に共通言語ランタイム（CLR）の内部で、実行およびデータベースへの接続が行えます。

クライアントライブラリや COM コンポーネントなどネイティブオペレーティングシステムで実行するコードはアンマネージコードと言います。マネージコードとアンマネージコードは 1 つのアプリケーション内に混在させることができます。ただし、アンマネージコードは共通言語ランタイムの外部にまで影響が及ぶため、現実的には複雑になり、パフォーマンスも低下します。また、セキュリティの危険にさらすことにもなりかねません。

接続の動作は、接続文字列や PsqlConnection オブジェクトのプロパティを使って定義することができます。

接続文字列の基本形式は、セミコロンで区切られた一連の「キーワード/値」のペアを含んでいます。次に、PSQL データプロバイダー用の単純な接続文字列のキーワードと値の例を示します。

•接続文字列オプション名内のスペースは必須です。

•接続文字列オプションでは大文字と小文字が区別されません。たとえば、Password と password は同じです。ただし、User ID や Password などのオプションの値には大小文字が区別されるものもあります。

•セミコロン、一重引用符、または二重引用符の入った値を含めるには、その値を二重引用符で囲みます。値にセミコロンと二重引用符の両方が入っている場合は、一重引用符を使って値を囲みます。

•値が二重引用符で始まる場合も一重引用符を使用できます。逆に、値が一重引用符で始まる場合は二重引用符を使用します。値に一重引用符と二重引用符のどちらも入っている場合は、値を囲むのに使用する文字が値の中に現れるたびに、その文字を 2 つ重ねる必要があります。

•先頭または末尾のスペースを文字列値に含めるには、その値を一重引用符または二重引用符で囲む必要があります。整数値や、ブール値、列挙値を一重引用符または二重引用符で囲んでも、値の前後のスペースは無視されます。ただし、文字列リテラルのキーワード内あるいは値内のスペースは維持されます。接続文字列内で一重引用符または二重引用符を使用する場合、それが値内の先頭または末尾の文字でなければ、区切り文字なしで使用できます（たとえば、Data Source= my'Server または Data Source= my"Server）。

•接続文字列オプションの値で特殊文字を使用することができます。特殊文字をエスケープするには、その値を一重引用符または二重引用符で囲みます。

•また、等号文字（=）の繰り返しを接続文字列で使用することもできます。たとえば、次のような例です。

•接続文字列に無効な接続文字列オプションが含まれている場合には、接続はエラーを返そうとします。たとえば、Alternate Servers を定義していないのに Load Balancing の値を指定すると、エラーが返されます。

•接続文字列に接続文字列オプションが重複して含まれている場合には、データプロバイダーは接続文字列内で最後に現れる接続文字列オプションを使用します。たとえば、次に示す接続文字列では、Connection Timeout が異なる値で 2 回現れます。データプロバイダーは 2 番目の値を使用するので、試行した接続を終了するまでに 35 秒待ちます。

Performance Wizard を使用して、ADO.NET データプロバイダーと ADO.NET Entity Framework データプロバイダーに最適な接続文字列オプションを選択することができます。

アプリケーションでストアドプロシージャを使用できるようにするには、次の手順に従ってください。

•PsqlCommand オブジェクトの CommandText プロパティにストアドプロシージャ名を設定します。

•PsqlCommand オブジェクトの CommandType プロパティに StoredProcedure を設定します。

•必要に応じてパラメーター引数を指定します。アプリケーションでは PsqlCommand オブジェクトのパラメーターコレクションに、ストアドプロシージャの引数の順序どおりにパラメーターを追加してください。ただし、アプリケーションでは PsqlCommand オブジェクトの CommandText プロパティでパラメーターマーカーを指定する必要はありません。

ストアドプロシージャから戻り値を取得するには、アプリケーションで PsqlCommand オブジェクトのパラメーターコレクションにパラメーターを余分に追加する必要があります。このパラメーターの ParameterDirection プロパティを ParameterDirection.ReturnValue に設定します。戻り値の取得用のパラメーターは、パラメーターコレクションのどこにあってもかまいません。これは、このパラメーターが、PsqlCommand オブジェクトの Text プロパティにある特定のパラメーターマーカーに対応していないためです。

ストアドプロシージャからの戻り値がない場合は、ParameterDirection プロパティに ReturnValue としてバインドされているパラメーターは無視されます。

ストアドプロシージャがデータベースから ReturnValue を返しても、アプリケーションでそのパラメーターをバインドしていない場合は、データプロバイダーによってその値が破棄されます。

ADO.NET Entity Framework ユーザーへの注記：PsqlConnection オブジェクトには、拡張された統計情報機能を提供するためのプロパティおよびメソッドが含まれています。これらのメソッドおよびプロパティは、ADO.NET データプロバイダーでは標準ですが、ADO.NET Entity Framework レイヤーでは利用できません。代わりに、ADO.NET Entity Framework データプロバイダーは、「疑似」ストアドプロシージャを介して同様の機能を公開します。詳細については、ADO.NET Entity Framework でのストアドプロシージャの使用を参照してください。

データプロバイダーは、IPv4 形式および IPv6 形式のインターネットプロトコル（IP）アドレスをサポートします。お使いのネットワークが名前付きサーバーをサポートしている場合は、データソースに指定されたサーバー名を IPv4 アドレスまたは IPv6 アドレスに解決することができます。

EnableIPV6 接続文字列オプションを True に設定すると、IPv6 プロトコルがインストールされたクライアントを、IPv4 アドレスまたは IPv6 アドレスのいずれかを使用するサーバーに接続できるようになります。IPv6 形式の詳細については、『Getting Started With PSQL』の IPv6 を参照してください。

データプロバイダーは、.NET Framework 内で完全に実装されるトランザクションのサポートには、100% マネージコードのみを使用します。

ローカルトランザクションは、基盤となるデータベースの内部的なトランザクションマネージャーを使用します。

アプリケーションでは、PsqlConnection オブジェクトで BeginTransaction を呼び出すことによって PsqlTransaction オブジェクトを作成します。トランザクションのコミットや中止などその後の操作は PsqlTransaction オブジェクトで実行されます。

PsqlConnection オブジェクトはスレッドセーフです。それぞれ別のスレッドでアクセスする複数の PsqlCommand オブジェクトが、同時に 1 つの接続を使用できます。

別々のスレッドでほかのパブリックオブジェクトやデータプロバイダー固有のオブジェクトに同時にアクセスするのはスレッドセーフではありません。

データプロバイダーは、.NET Framework SDK の規定に従って Unicode をサポートします。これは、データプロバイダーでは Unicode UTF-16 エンコーディングで文字を表わすことを意味します。

データプロバイダーは UTF-16 文字をデータベースで使用されている形式に変換し、.NET Framework 文字列をアプリケーションに返します。たとえば、PSQL データベースコードページが拡張 ASCII 形式である場合、データプロバイダーは拡張 ASCII を使用してデータベースに送られた文字を表します。その後、データプロバイダーはアプリケーションに送り戻される前に、返された拡張 ASCII 文字を変換します。

Unicode と国際的な文字の .NET Framework 実装に関する詳細については、.NET Framework SDK のドキュメントを参照してください。

PSQL は ReadCommitted と Serializable の分離レベルをサポートします。PSQL はレコードレベルのロックをサポートします。詳細については、ロックレベルと分離レベルを参照してください。

PSQL データプロバイダーでサポートする SQL エスケープシーケンスの説明については、.NET の SQL エスケープシーケンスを参照してください。

イベントハンドラーは PsqlInfoMessageEventArgs 型の引数を受け取ります。これにはイベントに関するデータが含まれています。詳細については、PsqlInfoMessageEventArgs オブジェクトを参照してください。

データベースサーバーから送られる警告や情報メッセージを処理したいクライアントは、このイベントを受け取るために PsqlInfoMessageEventHandler デリゲートを作成してください。

これらのイベントを使用して、パッケージ、ストアドプロシージャ、またはストアド関数（これらはすべてコマンドを作成します）の作成時に発生するエラーを取得することができます。パッケージ、ストアドプロシージャ、またはストアド関数で作成されたコマンドをコンパイルするときに PSQL でエラーが検出されると、有効ではありませんがオブジェクトが作成されます。イベントが送られ、エラー発生したことを示します。

次のコードでは、PsqlConnection オブジェクトの InfoMessage イベントを処理するメソッドを表わすデリゲートを定義しています。

ここで、sender はイベントを生成したオブジェクト、e は警告を説明する PsqlInfoMessageEventArgs オブジェクトです。イベントとデリゲートの詳細については、Microsoft .NET Framework SDK のドキュメントを参照してください。

PsqlError オブジェクトは、PSQL サーバーで生成されたエラーや警告に関する情報を収集します。詳細については、PsqlError オブジェクトを参照してください。

PsqlException オブジェクトは、PSQL サーバーがエラーを返したときに作成されスローされます。データプロバイダーによって生成された例外は標準のランタイム例外として返されます。詳細については、PsqlException オブジェクトを参照してください。

データプロバイダーでは .NET パブリックオブジェクトをサポートし、それらをシールドオブジェクト（封印されたオブジェクト）として公開します。

データコンシューマーアプリケーションの開発者は、Microsoft .NET の仕様やオブジェクト指向のプログラミング技術に精通している必要があります。

•「Microsoft .NET へのアップグレード」 - 「ADO プログラマのための ADO.NET」
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/aa302323.aspx

•「.NET Framework データプロバイダーによるデータのアクセス」
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/aa735598(VS.71).aspx

•「ADO.NET 2.0 基本クラスおよびファクトリによる汎用的なコーディング」
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/dd278213.aspx